いよいよオースチンともお別れの時が来てしまった。今までで一番眠れたのが今日だったけど、それでも6時間あまり。そもそも旅行に行くといつもこんな感じだ。みんなより早く起きてシャワーを浴びたが、鼻の頭にニキビができているのに気づいた。なんてこった。始終食べ続けた肉食生活によって蓄積された僕の体内の不純物がこんな場所に排出されようとしている…。
それはそうと、冷蔵庫に残っていた激マズのスポーツドリンク(わざとまずそうなのを買って飲んでいた)の残りも飲み干し、ゴミを捨てていく。
飛行機の時間までは余裕があるけど、みんな何か食べてから空港へ行きたいと思っていたので早めに出発することにした。
ホテルのドアを起きると照りつける強い日差しのもとで例の鳥がまた今日もけたたましく鳴いている。見た目はとてもかわいいんだけど鳴き方はアメリカンだ。
ホテル前のばかでかい幹線道路、35号線を南下して空港通りを左折し、まずは齋藤さんがレンタカーにガスを補充。もちろんセルフサービスなのだが、誰もお金をどこに入れるのかわからない。へんな所にドル札を突っ込もうとしていると、どこからともなく聞こえてくる声。「金は店の中で払ってくれ」。どうやら後ろにある店の中から店主が見ていたらしく、スピーカー越しに声が聞こえていたのだ。
しばらくすると支払いを済ませた齋藤さんと中原さんが店の中から戻ってきた。「店のおじさん、すごくいい人でしたよ」。よかったよかった。これでレンタカーは無事返せる。
しばらく道路を走っていると、ボコボコにへこんだ車が僕たちを追い抜かしていく。完全に事故車だ(笑)。ボコボコの車を見るのは実はこれで2度目。あちこちにこういう車が走っているらしい。
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自動車もやたらにでかいDODGEやシェヴィー(シボレーの愛称)が多く、たまに走る日本車が繊細に見える。中にはリアの窓ガラスに白いマジックででかでかと「この車XXドルで売ります!電話番号XXXXXX」と書いてある車も走っている。後続車がそれ見て電話かけるんだろうか。とにかくドライバーは売れるまでは乗っていたいということなんだろう。合理的すぎ。
道のあちこちでヒッチハイクをしている人や金を恵んで欲しいホームレスが段ボールに字を書いて交差点に立っている光景をよく見かけた。ホームレスは日本にもいるけど、あんなに積極的な行動をおこしているのは一度も見たことがない。そこの感覚もアメリカなのだ。一度だけ信号待ちの車からお金をもらっているホームレスを見た。あそこに1日中立っていればそれなりの成果はあるんだろう。
そうこうしているうちに僕たちの目に飛び込んできたのが「JACK IN THE BOX」の看板。これがファーストフードの店だということは全員わかっていた。なぜなら以前夜中に腹が減って食べるところを探していたときに別のチェーン店を見つけて入ろうとしたら店が閉まっていたという悲しい出来事があったからだ。その晩ホテルに帰ってネットでメニューを見たらテリヤキボールみたいなご飯物が置いてあることも知っていたので、ぜひ試したかったのだ。
店内は日本のモスバーガーなんかと変わらない感じでいたって普通。清潔感もある。レジの女の子は歯の矯正をしたかわいいハイスクールのバイトさんという雰囲気。まさし君が例のテリヤキを頼んだので、僕はクリスピー・チキン・バーガーを注文。「コンボ」と呼ばれるドリンクとポテト付きにして、さらにうまそうななんとかベリー・スムージーも注文。「なんとか」の部分は難しい単語で忘れた。
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ドリンクは空のカップを渡されて隣にあるサーバーで自分で好きなドリンクを注ぐシステム。ところがドリンクは「レギュラー」を頼んだはずなのに来たカップがこのありさま。最初は間違ってきたと思ったが、どうやらこれがレギュラーらしい。オー・ホワッタ・テキサス・サイズ! 日本のLサイズよりも大きいカップに気後れしてかなり控えめな量のドリンクを注いだつもりだったけど、結局飲みきれなかった。自分の注いだ量が少なく見えたのはカップがでかずぎたからだった。
ハンバーガーもなんとかスムージーも味はよかった。特にスムージーはおすすめ。フレッシュなベリーを使っているらしい。このあっさり感は十分日本でも通用する味だ。
中原さんが気軽に頼んでしまったサラダがこれまた破壊的に巨大だった。これは日本では4名様お取り分け用サイズでしょ。みんな手伝って一生懸命サラダを食った。9dw、アメリカを食らう!
食べ終わった頃にはどっぷりと「食べ疲れ」が出て、今度はとてつもない満腹感に襲われ始めた。空腹と満腹の振れ幅がでかすぎる。
空港へはほどなく到着。空港に来たのがずいぶん前のような気もするが実は4日、実質3日しか経っていない。
空港のセキュリティ・チェックは相変わらず厳しく、液体の持ち込みはきわめて限定的、X線には上着と帽子と靴まで脱がされて、裸足のまま金属探をくぐり抜ける。そしてまたしてもあの狭い飛行機に乗ってワシントンDCへ向かった。さよならオースチン!
ワシントンDCのダラス空港に着いたのは夜の10時。ダラスの緯度は北海道よりも高いためか、結構肌寒い。暑がりの僕とアメリカ人は半袖だけど、まさし君と中原さんは長袖で子犬のように震えている。飛行機が寒かったらしい。
ホテルまではタクシーで移動することになった。ドライバーはインド系のおじさん。数字の3を「トゥリ」と発音するあたりがインドっぽい。おじさんの若干荒い運転で一行は無事ホテルに到着した。
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チェックインを初めてまずはトラブル発生。予約の部屋の数が違っているらしい。マネージャーも出てきてすったもんだしたあげく、女性の中原さんを除いて残りの4人がツインの部屋1つに泊まることになった。エクストラ・ベッドを入れてもらうことになったけど、どうやら言葉がうまく伝わっていなかったらしく、再度リクエストしに行く。
問題は食事で、ホテルの人に聞いてもこの時間では食べようにも開いている店がないらしい。タクシーに乗って"IHOP"に行くしかないらしい。
実はこのIHOPがどんな店なのか、僕たちは理解していた。オースチンで宿泊したホテルのとなりにあって2日連続でそこへ行ったからだ。24時間営業のファミレスだが、間違っても雑炊セットは置いていない。肉だ。夜中の3時に行っても分厚いステーキが食える。
でオースチンのIHOPの話を少し。ここの夜中にはエディ・マーフィーみたいなしゃべり方をする陽気な黒い兄ちゃんがいて、彼らは僕らが日本からきたことを知って、2回目には「コンニチワ!」と日本語で挨拶をしてぺこりと頭を下げた。その直後、自分で爆笑してやがる。あまりにもテンションが高いのでこっちまでつられて笑ってしまった。見た目と振る舞いからは想像できなかったが、どうやらアニメ(本人はアナミと発音していた)が好きらしく、日本へ行ってみたいらしい。僕たちから15時間飛行機に乗ったことと、運賃の高さをきいて「じゃもっとパンケーキを焼かなくっちゃ!」と小走りで去っていった。こいつ吉本新喜劇っぽい。
話を戻すが結局タクシーに乗ってまでIHOPでまた肉を食べるかと思うと、もうこのままお菓子食って寝たい気持ちになってきた。というわけで夕食は抜き!
ついでに5日目の話までしちゃおう。実はこの文章もアメリカから東京へ帰るユナイテッド803便の中で書いているのだ。座席は日本人でも狭く感じる。ここだけはアメリカンサイズではないのだ。それでも13時間はここに座っていなきゃいけない。ケツがもう早くもやられ始めている。
ダラスは国際空港で、ホテルからは昼間はシャトルバスがあった。これはありがたい。途中車内から見える風景はテキサスとは若干違って緑が枯れた色をしている。ただだだっ広いのは同じ。
空港ではまたいつものように靴を脱いでセキュリティ・チェックを受け、パスポートに紫外線をあてられて偽造かどうかチェックされ、ようやく中に入れた。これであとは帰るだけだ。
それから13時間。成田に到着。空港のチェックはさすが日本、スムースだったが、やたらと報道関係者がいる。僕らと同じ飛行機に乗っていたらしい黒人の紳士が報道のカメラに囲まれて消えていった。
昨日成田で飛行機が墜落した話はそのあと判明した。まったく知らなかった。帰りが昨日だったら名古屋におろされていたかもしれない。勤勉な日本人の必死の滑走路復旧作業によって1日違いで帰ってきた僕たちは事なきを得た。
KIRIN 午後の紅茶を買って成田エクスプレスに乗る。あー日本に帰ってきたという感じ。夕方ではあるけれども、テキサスの空を見続けた目にはどことなくぼんやりとした空色に見える。やっぱりこれが見慣れた色だ。ポンコツの車も、字を書いた段ボールを持って立っているホームレスも、巨大なハンバーガーも、上半身裸で自転車乗っているやつも、棺桶みたいな牽引車を付けて走っている機材車も、全身タトゥーだらけのファンキーなお姉ちゃんも、エディ・マーフィーみたいなしゃべり方をするファミレスの店員も、フレディ・マーキュリーに激似の客室乗務員も、みーんな地球の裏側に行ってしまってここにはいない。彼らは僕らとは別に、そこでそれぞれの人生を歩んでいるんだ。また会おうアメリカ!
以上、ここまでが9dw@SXSWの一部始終です。この間、レコーディングとミックスが中断してずっと待ってくれていたアーティスト&関係者の皆さんにお詫びするとともに、貴重な体験の機会を与えてくれた齋藤さん、そして献身的なサポートをしてくれた同行の中原さん、そしてメンバーにも感謝したいと思います。最後に僕のファミリーにも感謝。明日から仕事頑張ります!
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